「それで、夢幻家からは何と?」

「それで、夢幻家からは何と?」

妖夢の言葉に、幽々子は手に持っていた手紙を丁寧に閉じながら言う。

「同盟を、それが受け入れられないのであれば不可侵条約を、だそうよ。よっぽど困っているみたいね。私も紫は相手にしたくないわ、本当に。」

「幽々子様はどうなさるおつもりで。相変わらずスカーレット家から敵視されているのですし、私としてはスカーレット家と同盟を結ばれないうちに味方にしておくのが良いとおもうのですが。」

「どうしようかしら。」

そう言いながら幽々子は桜並木の下をゆっくりと歩く。春に自らが起こした西行妖を満開にさせようとした事件で冥界には春度が未だ充満していた。殆どは幻想郷へと戻ったものの、西行妖に蓄えられていた分は霊夢達には取り返すことができず、その影響でその周りでは相変わらず桜が咲き乱れていた。

 風が吹き、桜の花びらが踊る。その花びらに誘われるように、花びらを誘うかのように幽々子が舞いを始める。幻想的な光景に妖夢は一瞬思考が止まるが、無理やり手元に持ってきていた資料へと意識を戻す。

「それでどうなさるおつもりですか、幽々子様。」

「そうねえ、不可侵同盟を結ぶ事についてはやぶさかではないわ。紫に飲み込まれるよりはまだ不可侵同盟をしてそこに残っていてもらったほうがましでしょうし。それでも紫が攻めてくるようであれば一時的なものなら同盟でもいいわ。さすがの紫でも今私達に勝負を挑んでくる程愚かではないでしょうね。」

「それはどういった理由でしょうか。」

「戦いは一人でしているのではない、ということよ。」

理由は自分で考えなさい、と幽々子は妖夢に向かって言う。

「とりあえず不可侵同盟は組みましょう。そのうち臣下としようかしら。兵力に大きな差が出たら夢幻家も諦めるでしょうし。」「分かりました。では、夢幻家には不可侵条約の件、了承しましたと伝えておきます。」そういって妖夢は幽々子に一礼をする。

「それに、夢幻家が夢幻館・夢幻回廊を維持している限り八雲家とは戦闘が開始されることはないでしょうし。虹川館の方は言うとおりしたのでしょう?」

「はい、既に虹川館は放棄。全ての物廃棄しておきました。それで宜しいのでしょうか。」

「それで十分よ。そこに住んでいた毛玉はちゃんと移住させたのでしょう?」

「はい、勿論です。」

「なら問題はないわね。四重結界なら妖忌がいるから問題無いでしょうし。彼ぐらいかしら。私達の軍で唯一紫と互角に戦えるのは。」

 

 

「八雲紫、かぁ。また面倒なのが……」

その頃、霊夢は頭をかかえていた。橙・藍・紫と全ての相手と戦った事があるので相手の力は十分に知っている。領地に関して言えば今は夢幻家が間にはさまれているものの、二つの拠点が一日のうちに陥落をしたところをみると、すぐに博麗神社と接する所までくるのだろう、と霊夢は考えている。

「同盟なんて結んでくれないだろうし、私の結界じゃ紫の境界を操る力には全く対抗できないだろうし……」

うー、とうなりながら頭をかかえる。一度紫には勝った事があるものの、あれは紫が寝起きだったからじゃないか、と霊夢は考えていた。

つい先日、輝夜が起こした月の事件で紫とペアを組んだときに、前回戦ったときとは比べ物にならないほどの妖力を紫から感じた。だからこそ、紫がこっちに攻めてくるかもしれない、という事態に頭を抱えているのだった。

 「戦わない、って訳にはいかないしなぁ。紫に明け渡すとどうなるかわかったもんじゃないわ。何をかんがえているのか良くわからないこともあるし。」

 うーん、と首をひねるが中々考えが纏まらない。 断片的な意見ならいくつも思いつくものの、全体を見据えてとなると容易には行かない所が多かった。

 霊夢としてはこの争いで水道水を手に入れるという目的はあったものの、ここまでひどい状態になるとは思っていなかった。出来ればこのままどことも戦わずに幻想郷を普通の状態に戻したかったのだが、そうもいかないようだった。

 「現在の兵力。博麗神社の総毛玉数約25000。八雲家の毛玉数約8000。数の上では全く問題が無し、と。問題は私と紫の間にやっぱり実力差がありすぎるのよねえ。慧音と妹紅が頼ってきてくれたのは嬉しいんだけど……」

上白沢家を併呑した際に、慧音・妹紅は共に博麗神社に付く事を決めた。慧音は霊夢が妖魔退治を生業としている、人間の味方をするという自らと同じ志の持ち主だから。妹紅は単純に慧音が博麗神社に付いたから、という事だった。

 一応ルーミアも味方にいるのだけれど、まだまだ成長途上。通常状態の橙と互角に戦ってくれればいいなあ、という程度の期待しか持てるレベルではないので、霊夢ははなから数に入れていなかった。

 「ともかく、蓬莱山家と不可侵を結ばないとどうしようもなさそうね。」

 自ら資金を使って蓬莱山家との不可侵条約を結ぶのは霊夢にとっては悔しい事だったが、この際仕方がないと割り切ることにしたのだった。

 

 

「八雲紫が出陣。永琳、どう思う?」

「どうかしら。とりあえず博麗神社・西行寺家・スカーレット家のどれかを破らないと私達の所へ侵攻する事は出来ないからまだあまり関係のない事だとはおもうけど。」

「そう、ならあまり気にしないことにするわ。」

「それがいいわね。」

輝夜はそう言うと手元にあった計画書へと目を落とす。

「じゃあやっぱり神綺を落としましょう。用意は出来ているんでしょう?」

「ええ、もちろん。ああ、それと博麗神社から不可侵条約の申し込みがきました。やっぱり大変そうですよ、博麗神社は。」

「そうでしょうねぇ。兵力では圧倒的に勝っているといっても相手があの八雲紫なんだし。」

「とりあえず、私達にとっても有益な申し込みだから了承で構いません?」

「ええ、勿論。」

「では、準備が出来次第出撃しましょう。神綺を手中に入れれば水道水はすぐそこですね。」

「ええ、楽しみねえ。」

そういって輝夜は嬉しそうに微笑んだ。

「せいぜい博麗神社には私達の時間稼ぎになってもらいましょう。」

輝夜のその言葉に永琳は深く頷いた

 

 

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